グルタミン酸の消化吸収メカニズム
私たちは、食事を通して各種の食物からタンパク質を摂っています。口に入ったタンパク質は胃液や膵液などの消化液の働きで、アミノ酸やペプチドに分解され、腸壁から体内へ吸収されます。腸から吸収されたアミノ酸は肝臓に集められ、血管に取り込まれて体内の各組織に運ばれます。そして、たんぱく質の再合成に使われます。最近の研究によると、アミノ酸に含まれるグルタミン酸(うま味物質)は、ほとんどが腸管のエネルギー源に使われ、さらに肝臓では他のアミノ酸の生合成にも使われることがわかっています。
脳内では独自にグルタミン酸を生合成
私たちの脳内にも沢山のグルタミン酸が含まれています。これらのグルタミン酸は神経伝達物質として、記憶、学習、認知などにかかわる重要な役割を果たしています。脳内にあるグルタミン酸は、全て脳内のグルコース(糖)から生合成されています。脳には「血液脳関門」と呼ばれるバリアが存在しているので、食事から摂ったグルタミン酸が脳に入ることはありません。大切な役割を担う脳内のグルタミン酸は脳内で厳重に管理されています。
体内で重要な働きをするグルタミン酸
たんぱく質は20種類のアミノ酸からできています。人の体内で合成することができず食物から摂取しなくてはならないものを必須(不可欠)アミノ酸といい、体内で合成できるものを非必須(可欠)アミノ酸といいます。必須アミノ酸は重要なもので、非必須アミノ酸は、あってもなくても、どうでもよいように思われがちですが、そうではありません。むしろ、非必須アミノ酸は生きていくためにとくに重要なアミノ酸なので、生体内で合成するシステムが備わっていると言えます。グルタミン酸は、身体のアミノ酸(遊離)の中で最も多いアミノ酸のひとつです。わたしたちの身体の中には体重のおよそ2%の割合でグルタミン酸が含まれています。動物性たんぱく質には約11~22%、植物性たんぱく質には約40%のグルタミン酸が含まれています。また、わたしたちは1日の食事のたんぱく質からは、約15~20gのグルタミン酸を摂取しています。グルタミン酸は私たちの生活に最も身近なアミノ酸であるといえるでしょう。摂取したアミノ酸は、腸から体内へ吸収され、血中を介して体内へと運ばれます。この時、血液中の必須アミノ濃度は上昇しますが、グルタミン酸濃度は上昇しません。多量にグルタミン酸を摂取した場合にも、グルタミン酸濃度が上昇しないのは、腸においてはとりわけグルタミン酸がエネルギー源として重要なはたらきをしていて、摂取したグルタミン酸は殆ど全てが腸で使われているからなのです。
グルタミン酸は、腸で殆ど使われるのにもかかわらず、体内で最も多く存在するアミノ酸です。このことから、腸以外の臓器でグルタミン酸が生産されていることは明らかです。例えば、脳でもグルタミン酸は大切な働きをしています。グルタミン酸は脳に最も多く存在するアミノ酸で、脳が必要なグルタミン酸は脳の中でグルコースから独自に作られています。私たちの脳は約1.4kgですが、何と1時間に700gのグルタミン酸を生成し、同量のグルタミン酸が分解されていることが知られています。信じがたいものの、グルタミン酸の代謝は、腸に限らす、脳においても非常に早く行われていることがわかります。以上のように、グルタミン酸は体内で合成できるため、必須アミノ酸ではありませんが、代謝を行う上で重要な働きを行うアミノ酸のひとつです。ゆえに、グルタミン酸は遊離アミノ酸として体内にたくさん存在し、活発に代謝が行われているのです。
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